診療のご案内


Treatment

目立たない部分入れ歯【ノンクラスプデンチャー】のQ&A

2022/12/8公開 (2023/2/11更新)

今回は金属のバネがついていないノンクラスプデンチャーというものについてお話しします。

保険で入れ歯を作る場合、残っている歯に金属のバネがかかるため、見た目が悪くなることを気にされる方が多いです。 そこでノンクラスプデンチャーについてよくお問い合わせのある内容をQ&A形式でまとめました。

目立たない部分入れ歯の種類、ノンクラスプデンチャーはどういう人におすすめか、保険適用になるか、デメリットや寿命などをお話しします。

ノンクラスプデンチャーってどういう入れ歯?

ノンクラスプデンチャーは特殊な樹脂でできており、通常は金属のバネ(クラスプ)がかかるところを歯ぐきと同色の樹脂で代用するため、バネが目立たず見た目が綺麗な入れ歯です。 正確に言うと、クラスプが無いわけではなく、金属ではないクラスプを用いるため、「ノンメタルクラスプデンチャー」とも呼ばれます。

写真のような片側のものだけでなく、

両側の入れ歯もノンクラスプにすることができます。

舌側に金属を使用した場合にも、前から見ると金属部分が見えません。

保険のプラスチックの義歯は、技工所で仕上げをする際にわずかに収縮をおこし適合が低下するので、ぴったりとフィットさせるのが難しいのですが、ノンクラスプデンチャーに使用する樹脂は収縮がおこらないため、非常に適合良く仕上がります。

さらに当院では、個人トレー、筋圧形成、シリコン印象といった方法を用いて精密な型取りを行うため、適合が良くなります。 そのため安定が良く、ズレや浮き上がりがほとんどなく、噛んでも歯ぐきが痛みにくい義歯となります。 また、歯を包み込むような設計のため、周囲の歯に負担がかかりにくく、歯と装置の間に食物がはさまることも少ないです。

自分の歯をほとんど削らず、ほぼ全ての部分入れ歯のケースで適用できるため、当院の多くの患者さんに愛用していただいています。

目立たない部分入れ歯は他にどんなものがある?

入れ歯を目立たなくするには、大きく分けて2つの考え方があります。

①そもそもバネを使わない方法

インプラント支持の義歯

歯がない部分にインプラント(人工歯根)を埋入し、義歯を安定させるための支えとする方法です。

通常のインプラントよりも本数が少なくて済みますが、外科手術が必要であり、費用と治療期間も多くかかります。 インプラントの支柱に義歯の維持装置を組み込むため、設計によっては残っている歯にバネをかける必要がなくなります。

アタッチメント義歯

残っている歯に磁石やボタンのような装置を組み込み、義歯を維持させる方法です。

装置は義歯の内部に隠れるので見た目はスッキリして、機能的にも優れています。 ただし、適応症が限られるうえ、コストが高くなる傾向があります。

テレスコープ(コーヌス)義歯

残っている歯を削って円筒形の装置を装着し、義歯をスッポリかぶせてしまう方法です。

茶筒の蓋をかぶせるような形で義歯を安定させるため、バネを使いません。 義歯にかかる力が全て歯に加わるため、よく噛めますが、歯に負担がかかって根が割れたりするケースがあり、歯を削る量も多いため、当院ではあまり行っていません。

②バネ自体を目立たなくする方法

ノンクラスプデンチャー

保険の義歯は残っている歯に金属のバネをかけますが、ノンクラスプデンチャーはバネの部分も歯ぐきと同じ色の特殊な樹脂でできています。

金属のバネを使わないため、入れ歯が入っていることが見た目に分かりません。

ホワイトクラスプ

バネが金属でなく白い樹脂(プラスチック)で作られた義歯です。

近くで見ると入れ歯と分かりますが、金属よりも目立ちにくくなっています。 他の方法と比べて強度が弱いことに加え、ゆるくなった時の調整ができないので、当院では扱っていません。

金属のバネを白く塗る

金属のバネを白く塗る金属のバネに接着処理をして、白いプラスチックでコーティングする方法があります。

一時的でもいいから目立たなくしたいという場合には有効です。 色味が自然でない、バネの厚みが増す、使っているうちに剝がれてしまう、剥がれてきたら必ず歯科医院で研磨する必要がある等のデメリットがあります。

上記の方法は全て保険適用外となります。 中でもノンクラスプデンチャーは、通常の義歯に近い工程で作製でき、適応症が広く、コストパフォーマンスにも優れるため、当院では患者さんにおすすめすることが多いです。

ノンクラスプデンチャーとスマイルデンチャーって同じもの?

インターネットで検索を行うと「スマイルデンチャー」という名前でよく出てきます。

「スマイルデンチャー」はノンクラスプデンチャーの商品名の一種です。

「スマイルデンチャー」はナイロン樹脂で出来ていますが、当院で作製するノンクラスプデンチャーはスーパーポリアミド樹脂で出来ています。 用途は同じですが、ナイロン樹脂よりも強度が高く、たわみが少ないのが特徴です。

ノンクラスプデンチャーはどういう人におすすめ?

金属のバネが気になる方や、バネの隙間に食物がはさまりやすい方にお勧めしています。

上の写真のように舌側に金属を使用した場合にも、前から見ると金属部分が見えません。

適用の幅が非常に広い入れ歯ですので、部分入れ歯を作製するほとんどのケースで使用できます。 上の写真のように、歯並びが悪く通常の義歯では安定しにくいケースでも、ノンクラスプデンチャーなら安定が得られることが多いです。

また、歯の付け根の部分を歯ぐきの色の樹脂で覆うため、歯ぐきが下がっているケースでは見た目上の歯の長さが改善され、元の歯よりも美しく仕上がります。 樹脂が歯を包み込むぶん、歯磨きが不十分だとプラークが停滞しやすい欠点もあるため、ブラッシングが苦手な方には正しいブラッシング方法を身につけて頂いたうえで作製します。

ホワイトクラスプの入れ歯とどっちがおすすめ?

ホワイトクラスプ(白いプラスチックのバネ)の入れ歯も、目立ちにくい入れ歯という点では目的は同じですが、ノンクラスプデンチャーと比較すると以下のような特徴があります。

  • 強度が弱く、修理がより難しい
  • ゆるくなった時の調整はほぼ不可能(技工所でのクラスプ再作製になる)
  • バネのたわみにより、義歯のズレが生じることがある
  • 義歯自体のベースは保険と同じプラスチックなので、適合が甘くなりやすい
  • 保険の金属のバネと形は似ているが、より太いので、異物感や食べかすの詰まりが多い
  • 残存歯の歯ぐきを覆わないので、プラークが停滞しにくい点ではノンクラスプより有利
  • 費用はどちらも自費診療で、ホワイトクラスプの場合はクラスプの数によって料金が変わるため、設計が単純なら安く、複雑なら高くなる

ノンクラスプデンチャーってデメリットある?

ノンクラスプデンチャーのデメリットとしては以下のことが挙げられます。

  • 保険適用外なので費用がかかる
  • 着脱に慣れが必要なので、手の不自由な方には不向き
  • 歯を包み込む設計のため、歯磨きが不十分だと歯ぐきに炎症が起こり、歯周病が悪化する場合がある
  • ゆるくなった時の締め直しや、歯ぐきの変化に対する内面の合わせ直しに手間がかかり、一度お預かりしての修正が必要になる場合もある

ノンクラスプデンチャーって保険適用?

保険適用外なので、自費診療になります。

ノンクラスプデンチャーの適応症は保険の部分入れ歯とほぼ同じなので、今後も保険適用になる可能性は低いと思われます。

近年、銀歯に使われる金属(金やパラジウム)の原価が高騰している背景から、金属を使わないメタルフリー修復物の保険適応が広がっています。 ですが、義歯に使われる金属(コバルト、クロムなど)は値段が安価で安定していて、高騰することはまずないので、メタルフリー義歯の保険適応化はあまり期待できません…。

ノンクラスプデンチャーの値段は?

以下は当院での料金設定(税込み)です。

歯の欠損が片側のみで、片側だけで完結する場合 110,000円
歯の欠損が片側だけだが、安定のために反対側にもバネをかける場合 132,000円
歯の欠損が両側にわたる場合 165,000円

ノンクラスプデンチャーは自費診療なので、価格は医院ごとに異なります。

上下に義歯を作る場合は、上下それぞれに料金がかかります。 義歯の舌側(裏側の見えない部分)を金属に置き換えると、より薄く違和感が少ないように作ることができます。その場合は、設計に応じて2~3万円+税が追加でかかります。

当院では、作製後1年間の保証を付けているため、正しく使用している中での1年以内の調整や修理は原則として無料で行っています。 1年経過後も、修理や調整にかかる料金は状況に応じて考慮させていただいています。

ノンクラスプデンチャーの寿命は?

ノンクラスプデンチャーは2~3年使用していると緩くなってくる傾向があります。

多くの場合は、調整(その場での調整またはお預かりによる技工所での調整)、または修理を行うことで快適に使い続けることができます。 大事に使われている方は、10年以上使用されているケースも多数あります。

ノンクラスプデンチャーって寝る時はどうしたら?

就寝時は、原則として入れ歯を外し、ブラシで汚れを落とした後、洗浄剤または水中で保管します。

奥歯があまり残っていないケースや歯周病で歯が揺れているケースなどで、歯ぎしりや食いしばりによる残存歯へのダメージが心配される場合は、入れ歯を装着しての就寝をお勧めする場合もあります。

以上、ノンクラスプデンチャーについてお問い合わせの多い内容をQ&A形式でまとめました。

どの義歯が適しているかは、患者さんのお口の中やレントゲンを見て個々の歯と歯ぐきの状態を精査した上で判断し、ご提案させていただいています。 興味のある方は、お電話頂いて実際に診察した上でご相談させていただけると幸いです。

お電話の前にご確認ください

おかげさまで多数のご予約・お問い合わせをいただき、大変ありがとうございます。

東京の方からご予約のお電話をいただくことが多いのですが、当院は福岡県の「六本にある歯科医院です。

おそらく東京都港区の「六本と勘違いされたのではないかと思います。

東京から来ていただけるならとても嬉しいですが、患者さんに移動時間・交通費など多大な負担をかけてしまいます。 お近くで歯医者さんを探してみてください。