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Treatment

難治性の根管治療:MTAセメントを用いた根管充填

2024/6/6公開 (2024/6/15更新)

MTAセメントとは

バイオセラミックスの一種であるMTAセメントは歯の神経や根の治療に使われる高性能な材料です。

封鎖性が高く、持続的な抗菌作用があり、組織の再生を誘導する効果があります。 保険では治療困難で抜歯せざるを得ないような歯でも、MTAセメントを使うと歯を残せることがある、画期的な材料です。

詳しくは歯髄温存療法の方の記事を見てみてください。

神経を抜かないで守る治療:MTAセメントによる歯髄温存療法

これらの性質を利用して、歯の根の治療においても次のような目的で用いられ、高い効果を発揮します。

  • 根管充填:
    歯根が重度に感染してしまい、通常の治療では治癒が難しい歯を残す
  • 根管穿孔封鎖:
    歯根に穴が空いてしまっている歯の修復
  • 外科的歯内療法:
    歯の内部からの治療では治癒が困難な歯に対して、外科処置(歯ぐき切開または一時的な抜歯)を伴う治療

MTAセメントは難治性の歯根の治療に用いるので、通常の根の治療で治癒するようなケースでは使用しません。

歯根が割れていなくて、根の先端や穴の空いた部分が歯周ポケット(歯周病)とつながっていないケースで適用できます。 割れていたり歯周ポケットとつながっているケースでは条件が悪くなるため、別の材料を用いた特殊な治療法をご提案する場合があります。

通常の歯根の治療とMTAセメントの比較

保険での治療の実情

  • 根の治療全般:
    通常の根管治療では感染した根の部分を削り取ってから詰め物をします。 保険の材料で封鎖すると症状が残ったり、病巣が治癒しない、再発するといったリスクが高いまま治療を完了する事になります。
    また、虫歯の範囲が広く根をたくさん削らなければならない場合にも、MTAセメントを使うことで痛みを緩和したり再発するリスクを下げることができます。
  • 根に穴が空いている場合:
    根に穴が空いてしまっている場合は、保険の場合は抜歯をするか、程度が小さければレジンという樹脂を使って封鎖します。 ですがレジンは体内の細胞から異物と判断されるため局所的な炎症が続くことになります。
  • 根の先端が大きく壊れてしまっている場合:
    根の先端が大きく壊れてしまっているケースや、通常の根管治療では感染を取り切れない場合は歯ぐきの切開または一時的な抜歯をして、根の先端の感染を直接除去し、詰め物をして戻す方法(外科的歯内療法)が必要となる場合があります。 その場合も、保険の材料では炎症が残ったり再発することが多いです。

このような状況で歯を残すことが難しいケースでも、MTAセメントで正確に封鎖を行うことで多くの歯が抜歯を免れ治癒に向かいます

特に外科的歯内療法では、保険では治癒が悪く再発率が高いため、ほとんどのケースでMTAセメントを用いています。

MTAセメントのメリットとデメリット

MTAセメントのメリット

  • 抜歯せずに済む:
    根の深部の感染や穴が空いていた場合に、保険材料で埋めた歯は痛みが残ってあまり噛めなかったり、いずれ抜歯に至る事が多いです。
    それに対してMTAセメントを応用すると治癒が良く、溶けてしまった骨も再生することが多いため、歯を残せる可能性が上がります。 結果として「自分の歯で噛める状態」を取り戻すことに大きく寄与します。
  • 周囲の歯の寿命を延ばす:
    抜歯をしてしまうと前後の歯を削ってブリッジにするか、入れ歯を作るか、インプラントを入れるか…という選択を迫られることになります。 歯が欠損するとどうしても支えの歯や反対側の歯に負担がかかり、残っている歯の寿命を縮めてしまいます
    MTAセメントを使い歯が残せると、快適に噛める状態を維持するだけでなく、残っている歯まで失い咬み合わせが崩壊していくのを食い止めることになります。

MTAセメントのデメリット

  • 治療が難しい:
    MTAセメントを適度な性状に練って、根の先端や穴が空いた部分に正確に詰めるのは、専用の器具と高い技術が必要です。 肉眼ではほぼ不可能なので、高倍率の拡大鏡を用いて行います。
  • 高価で保険が効かない:
    薬剤自体が高価で、保険が適用出来ません。 当院の場合は、1根管あたり10,000円+税で行っています。
  • 除去が困難:
    保険で用いる根の詰め物は、もし病巣が再発した時に専用の薬剤で溶かして再治療する事が出来ますが、MTAセメントは硬化すると除去が出来ません。 MTAセメントを根管充填に用いた場合は、悪くなった場合の次の手は外科処置か抜歯となります。
    そのため、MTA充填前の感染源の除去には慎重さ、精密さを要しますし、「どちらにしても次に悪くなったら再治療しても治癒が望めない」ような状態の悪い歯に対して適用するのが一般的です。

MTAセメントの治療の流れと治療期間

根管治療の場合

  1. ラバーダム防湿を行い、歯根の内面の感染源を完全に除去、洗浄する
  2. MTAセメントを練り、根の先端部または穴が空いた部分に緊密に詰める
    封鎖が得られれば、残りの空洞は除去可能な詰め物で埋める場合もある
  3. 仮封(仮のフタ)をする
  4. 後日、歯の土台(コア)を築造し、被せ物で修復の仕上げを行う

外科的歯内療法の場合

  1. 歯ぐきの切開や一時的な抜歯を行い、歯根の先端を確認する
  2. 根の周りに出来た病巣(骨が溶けて膿がたまった所)を除去してきれいにする
  3. 歯根面に感染源やヒビがないか確認し、原因となっている部分を削除・清掃する
  4. 削ったところにMTAセメントを緊密に詰める
  5. 歯肉の縫合や歯の再植を行う

治療期間はケースによって大きく変わってきます。

治療回数は2~8回、経過観察期間は0日から半年かかる場合もあります。 患者さんの状態を見た後であればある程度の治療計画をお伝えできます。

MTAセメントは保険適用になるのか

2024年6月現在、MTAセメントによる根管充填は保険適用になりません。

根管充填におけるMTAセメントの有効性はすでに世界中で十分に検証がなされており、高い治療効果が立証されているので、将来的に保険適応になる可能性はあると思います。

ただ、薬剤が高価なことに加え、高倍率拡大鏡やマイクロスコープが必須であり、治療には相当に高度な技術が必要とされるため、保険適用には一定の条件が求められると思います。 診療報酬の大幅な引き上げがない限り実現は難しいと思います。

MTAセメントの治療費と保険治療との比較

保険診療の費用

保険での根管充填の費用は次のようになります(3割負担の場合)。

根管充填 630~1,010円
穿孔封鎖 530~860円
外科的歯内療法 4,050円
(別途、麻酔・投薬料)

保険での根管充填にはMTAセメントは使用できません。 レントゲン料・疾患管理料等は別途かかります。

MTAセメントの費用

MTAセメントを使用した自費診療の費用は次のようになります。

MTAによる根管充填 1根管あたり 10,000円+税
MTAによる穿孔封鎖 1カ所あたり 10,000円+税
MTAを用いた外科的歯内療法 1歯あたり 30,000円+税~(歯種や状態による)

自費診療の費用は医院ごとに異なっていて、上は当院での費用です。 いずれも、別途歯冠補綴に費用が必要になります。

最後に

MTAを用いた根管治療は、歯を失うかどうかの瀬戸際で選択される治療方法です。

歯を失うと、他の歯に負担がかかって、噛み合わせの崩壊に一歩近づいてしまいます。 それを止められるのはインプラントしかありません。

『条件の悪い歯は積極的に抜歯してインプラントを入れる』という方針の歯科医院も多いですが、私としては出来るだけ抜かずに、ちゃんと噛める状態にして残したいという想いが強いため、歯を残すことにこだわり、治療しやすい設定にしています。

MTA根管充填は、歯の保存のためには無くてはならない方法です。 ご自分の歯で噛んで食べたいとお考えの方は是非ご相談ください!

お電話の前にご確認ください

おかげさまで多数のご予約・お問い合わせをいただき、大変ありがとうございます。

東京の方からご予約のお電話をいただくことが多いのですが、当院は福岡県の「六本にある歯科医院です。

おそらく東京都港区の「六本と勘違いされたのではないかと思います。

東京から来ていただけるならとても嬉しいですが、患者さんに移動時間・交通費など多大な負担をかけてしまいます。 お近くで歯医者さんを探してみてください。